将来の介護費用と介護保険の関係(重度後遺障害事案)

1 将来の介護費用と介護保険の関係

(1)将来の介護費用

脳損傷や脊髄損傷(頸髄損傷・頚髄損傷など)による、遷延性意識障害、重度の高次脳機能障害、重度の麻痺(四肢麻痺、片麻痺、対麻痺)等の、介護を要する重度の後遺障害事案の場合、将来にわたり、交通事故被害者の介護が必要になります。

そして、かかる介護を、介護業者に依頼する場合、費用がかかります。また、交通事故被害者の近親者が介護をする場合、近親者の肉体的、精神的な負担となります。

そこで、交通事故の重度後遺障害事案における裁判実務では、このような費用や負担を、将来の介護費用として、被害者の損害と認めています。

詳しくは、「将来の介護費用(重度後遺障害事案)」をご覧ください。

(2)問題点

この点、現在の介護保険の制度では、65歳以上の場合、介護費用は、自己負担1割となっています。

そこで、将来の介護費用の算定にあたり,将来、介護保険から給付を受けられることを考慮すべきかが問題となります。

(3)判例の傾向

判例の傾向
この点、最高裁判例が、類似の事案で、損害の算定にあたり、将来、遺族年金から給付を受けられることを考慮することを、原則として否定する判断をしています。
そこで、判例の傾向としては、同様に、原則として、考慮せず、但し、(1)現実に給付されたものや(2)給付されることが確実であるものは、考慮すべきと考える判例が、多数派である状況です。
類似の事案における最高裁判例は、次のイの最高裁判例になります。
最高裁判例
最高裁大法廷平成5年3月24日判決は、次のように、判示しています。
なお、文中にある、損益相殺とは、不法行為等で損害を被った者が、同じ原因で利益を得た場合、損害額から利益分を控除すべきであるという原則をいいます。
不法行為と同一の原因によって被害者又はその相続人が第三者に対する債権を取得した場合には、当該債権を取得したということだけから損益相殺的な調整をすることは、原則として許されないものといわなければならない。けだし、債権には、程度の差こそあれ、履行の不確実性を伴うことは避けられず、現実に履行されることが常に確実であるということはできない上、特に当該債権が将来にわたって継続的に履行されることを内容とするもので、その存続自体についても不確実性を伴うものであるような場合には、当該債権を取得したということだけでは、これによって被害者に生じた損害が現実に補てんされたものということができないからである。」
「被害者又はその相続人が取得した債権につき、損益相殺的な調整を図ることが許されるのは、(1)当該債権が現実に履行されたか又は(2)これと同視し得る程度にその存続及び履行が確実であるということができる場合に限られるものというべきである。」

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